2006年6月 No.57
 
省エネ住宅の切り札「樹脂サッシ」の最新事情

冷暖房費を節約しCO2を削減。高層マンション、ホテルなどでも続々採用

 

  樹脂サッシは、断熱効果、防音効果、結露防止効果など多彩な特長を備えた、新時代のエコ建材。今、都市部の高層マンションなどでも樹脂サッシを標準装備するケースが続々登場しています。冷暖房費を節約しCO2削減にも役立つ樹脂サッシの、最近の動きを追いました。

●バツグンの高断熱と高気密性

 
  京都議定書の発効など、地球温暖化への対応が加速する中、一般の住宅にも省エネや環境に配慮した設計がますます求められる時代。その決め手として熱い期待を集めているのが樹脂サッシです。
 樹脂サッシは、塩ビ製の窓枠に二重ガラスを組み合わせることでバツグンの高断熱・高気密性を実現。冷暖房などの熱エネルギーの損失を抑え、CO
2排出量の大幅な削減を可能にするほか、結露やカビがほとんどなくなり住宅の長寿命化にも貢献します(図1)。また、防音効果にも優れ、外部の騒音をシャットアウトします。
 樹脂サッシには、アルミサッシの室内側に内窓として樹脂サッシを取り付けた二重サッシや、塩ビの窓枠にLow-E複層ガラス(複層ガラスの内面に透明な金属コートを施した低放射ガラス)を組み合わせたタイプなどがありますが(図2)、高い環境性能と経済性などが評価されて、その需要は一般家屋はもちろん、マンションやホテルなどにまで広がりをみせはじめています。

 

●「芝浦アイランド ケープタワー」のケース

 
  その最新の事例が、地上48階、総戸数1095戸のタワーマンション「芝浦アイランド ケープタワー」。東京都港区の臨海部に建設が進められているこのマンションは、窓外にお台場やレインボーブリッジを望み、その眺望のよさを生かす上でも広々とした窓の造りが大きな魅力となっていますが、同時に、そのぶんだけ冷暖房のエネルギーロスや騒音への対策が避けられない課題。
 このため、ケープタワーでは全戸に二重サッシタイプの窓を使用しており、この「断熱性と遮音性にとことんこだわった」つくりが、消費者に対するセールスポイントのひとつとなっています。
 製品を納入した樹脂サッシメーカーの話。「ケープタワーの場合、すぐ近くにヘリポートの建設が予定されており、その防音対策としても樹脂サッシが不可欠になっている。また、京都議定書における温室効果ガスの削減に向けて、2006年から総面積2000平方メートル超の高層建築については断熱対策が義務付けられる。樹脂サッシの使用についてはまだ指導の段階だが、このマンションはそうした動きを先取りした建物ともいえる」
 ケープタワーの樹脂サッシは、敷居の立ち上がりがない、フラットなバリアフリー構造となっているのもポイントのひとつです。

 

●2008年以降は「爆発的に普及」

 
  「芝浦アイランド ケープタワー」のほかにも、JR札幌駅北口前に建設が予定されている地上40階建、総戸数336戸の「D'グラフォート札幌ステーションタワー」や、東京都江東区に建てられた総戸数38戸のマンション「ナイスシティアリーナ亀戸」など、樹脂サッシを装備する住宅は急速に増えてきています。このうち、「ナイスシティアリーナ亀戸」は、外断熱工法とLow-E複層ガラスの樹脂サッシの組み合わせで、さらに高度な断熱性を追及したケース。
 また、マンションばかりでなく東京・銀座4丁目交差点そばの「メルキュールホテル銀座東京」(部屋数208室)のように樹脂サッシでグレードアップを図るシティホテルも登場しています。
 先の樹脂サッシメーカーでは、樹脂サッシの将来性について、「京都議定書に基づく温室効果ガス削減量のカウントが実際にはじまる2008年以降は、爆発的に普及していく」と見ています。特に、マンションやホテル、新築住宅と並んで、全国4500万戸といわれる膨大なリフォーム市場は今後の有望な成長株。既設のアルミサッシの室内側に内窓として樹脂サッシを追加すれば簡単に高断熱リフォームができるため、一般家屋にも積極的な開口部対策が求められるようになる2008年以降、その需要は急増することが予想されます。
 「いっぺん体験したら普通のサッシでは我慢できなくなる」と言われる樹脂サッシ。東京都でも、首都高速の周辺家屋での騒音対策として二重サッシの装備を推奨するなど、樹脂サッシに対する期待と注目は、都市部を中心に今後ますます高まっていきそうです。