2005年12月 No.55
 

 塩ビのリサイクル製品にもエコマーク表示が可能

  (財)日本環境協会に新認定基準。塩ビのマテリアルリサイクル率の高さなどに言及

 

    塩ビのリサイクル製品にエコマークの表示の許される範囲が広がりました。プラスチック製品に関する認定基準の改定に伴うもので、塩ビ製品のマテリアルリサイクル率が他のプラスチック製品に比べて高いこと、LCA 的にもリサイクル製品は環境負荷が少ないこと、などが評価された結果。一般廃棄物になる塩ビ製品についてもエコマーク表示が認可されたことは、塩ビに対する理解と認識が大きく前進したことを示す動きといえます。  

 

塩ビに対する制限条項を撤廃

  消費者が環境に配慮した製品を選ぶ際の目安として広く定着しているエコマーク。この制度は、(財)日本環境協会が平成元年から「エコマーク事業」として実施しているもので、同協会のエコマーク事務局がその運営管理を担当しています。
 エコマークは、「私たちの身の回りにある商品の中で、ライフサイクル全体を通じて環境負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品」に付けられるものですが、その使用・表示にあたっては、各商品類型(商品カテゴリー)ごとに定められた認定基準を満たすことが要件となっており、現在40 を越える商品類型について個別に認定基準が定められています(別掲参照)。
 今回認定基準の改定が行われた商品類型(No.118)は、もともと「再生材料を使用したプラスチック製品」と名づけられていたもので、旧基準(以下、Version1 )では、「廃棄時に主として一般廃棄物となる商品については、(塩ビなどの)ハロゲン系の元素を
含むポリマー種を使用した製品は対象範囲外とする」という条項が入っていたため、塩ビのリサイクル製品にエコマークを付けることができない状態となっていました。
 これに対して、9月1日付けで正式に制定された新基準(Version2)は、商品類型の名称を「プラスチック製品」と改めた上で、上記の塩ビに対する制限条項を撤廃。廃棄時に一般廃棄物となる塩ビ製品であっても、その他の条件(使用済み製品の70%以上が回収されかつ70%以上がリサイクルされることなど)を満たせばエコマークの認定を受けることが可能になりました。

★エコマーク商品類型と認定基準

 平成エコマーク認定基準は、商品の用途や特徴などで分類されたカテゴリーごとに制定される。これは、用途・特徴などにより商品に使用される材料や環境負荷が異なるためで、現在、No.118のほかに、No.104「家庭用繊維製品Version2」、No.112「文具・事務用品Version1」、No.123「再生材料を使用した建築用製品」、No.131「土木製品Version1」など45の商品類型と認定基準が定められている。規準の有効期限は制定日から5年で(期限内でも必要に応じて改定)、通常、期限日の約一年前に、新たな認定基準(新Version)を制定することとしている。
 基準の制定に当たっては、エコマーク類型・基準制定委員会の中に設けられたワーキンググループ(業界団体、消費者団体、中立機関の専門家などで構成)が、商品類型ごとに、そのライフサイクル(資源採取から廃棄・リサイクルまで)を通じたあらゆる環境負荷を考慮して原案を策定、パブリックコメントを募集(公表期間60 日)した上で、再度WG が検討を行い上部の委員会で最終的に制定する。


 

環境負荷も低レベル

 塩ビ工業・環境協会(VEC)では、昨年基準の改定作業が始まったのを受けて、科学的データに基づく最新の塩ビ情報をエコマーク事務局に提供するなどの働きかけを続けてきました。今回の改定は、こうした積極的な活動により塩ビへの理解が大きく前進した結果とも考えられ、新基準と同時に公表された「解説」の中でも、改定理由についての詳細な記述が示されています。
 従来、塩ビ製品へのエコマーク表示が認められてこなかったのは、「廃棄時に焼却処理や再生燃料として利用する場合、処理工程および環境への負荷増加がないように」(Version1 「解説」中の記述)との理由によるものですが、新基準の「解説」では、ダイオキシン類の発生源は塩ビ系に限定されるものではなく、焼却処理される塩ビの量を減らしても排出量削減には結びつかないこと、塩ビ製品のマテリアルリサイクル率は他のプラスチック製品に比べて高く、LCA的にも塩ビのリサイクル製品は環境負荷が少ないことなどに言及した上で、「廃プラスチックを再利用しやすくするという観点と、リサイクルヘの取り組みが進んでいるというポリ塩化ビニルの特性を考慮し、本商品類型では、一般廃棄物になることの多い製品であっても、使用済み製品の回収やリサイクルを行う一定の取り組みが行われている製品については、認定していく方向とした」と結論付けています。
 今回の改定に関して、VECでは、「塩ビ製品へのエコマーク表示にはなお一定の条件が課せられているものの、塩ビに対する誤解が解け、リサイクルの実績が評価されたことなどは大きな成果といえる。これを契機に、依然として塩ビ製品への表示不可基準が定められている他の商品類型についても、早急に改定を進めるべく働きかけていく。また、塩ビに対する世間の認識が大きく変化してきていることを、広く社会にアピールする活動を続けていきたい」としています。

 

★「プラスチック製品 Version2.0」の解説から(概要)

 (ワーキンググループでは)ハロゲン系化合物による環境負荷について、次のような議論があった。
 ダイオキシン特別措置法の施行などによって、廃棄物焼却炉から排出されるダイオキシン類の量は、1997年の6,500g‐TEQ/年(100%)から、2003年の145g‐TEQ/年(2.2%)まで減少してきている。また、ダイオキシン類の生成には、塩素源が必要であるが、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン系化合物に含まれる塩素のみではなく、食塩などの無機塩素もダイオキシン類の塩素源となる。したがって、一般廃棄物に混入するポリ塩化ビニルなどのハロゲン系化合物を低減させても、ダイオキシン類の排出量低減に結びつかない。これらの理由から、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン系化合物を使用したプラスチック製品を一般ごみとともに焼却しても、廃棄物焼却場から発生するダイオキシン類によるリスクは増加せず、ハロゲン系化合物を添加した製品を特別扱いする必要はないという見解もあった。(中略)
 さらに、「資源の有効な利用の促進に関する法律」では、ポリ塩化ビニル製の建材(硬質塩化ビニル製の管、雨どい及び窓枠並びに塩化ビニル製の床材及び壁紙)は、分別回収を促進するための指定表示製品に指定されており、硬質塩化ビニル製の管・継手の製造業は、特定再利用業種に指定されている。これらの製品や農業用塩ビフィルムについては、回収とリサイクルが進められており、塩ビ製品全体のマテリアルリサイクル率は24 %で、他のプラスチック製品と比較して高い。また、ポリ塩化ビニル樹脂のマテリアルリサイクルは、バージン材料製造と比較して環境負荷が少ないというLCA の結果が示されており、マテリアルリサイクルを進めることで確実な環境負荷の低減を期待できる。
 以上により、廃プラスチックを再利用しやすくするという観点と、リサイクルへの取り組みが進んでいるというポリ塩化ビニル製品の特性を考慮し、本商品類型では、一般廃棄物になることの多い製品であっても、使用済み製品の回収やリサイクルを行う一定の取り組みが行われている製品については、認定していく方向とした。