2004年12月 No.51
 
共同住宅解体時のプラスチック建材排出量を調査

プラ処理協、戸建住宅調査に続く第二弾。再資源化への課題も浮き彫りに

 

  公団アパートなど共同住宅の解体でどれだけのプラスチック建材が発生するのか―。(社)プラスチック処理促進協会が実施した調査結果(住宅解体系廃プラスチックの原単位調査および排出量推定)から見えてきた、プラスチック建材の排出実態と課題。

 

●建設廃棄物のリサイクルに貴重なデータ

 
  プラスチック建材は、軽くて丈夫な上、断熱性、デザイン性に優れるなどの利点を生かして、快適な住宅の普及に大きく貢献してきました。しかし、住宅の平均寿命が30年から40年程度とされる中で、1960年代以降本格的に使用されはじめたプラスチック建材は解体、改修工事などで廃棄物として排出される時期を迎えています。
 こうした中、平成14年5月には「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)の完全施行でコンクリート、木材などの分別・リサイクルが義務付けられる一方、プラスチック建材についても、「資源有効利用促進法」(改正リサイクル法)に基づいて塩ビ管・継手とその他主要な塩ビ製建材(壁紙、床材など)のリサイクルが進められるなど、建設廃棄物の有効利用に向けた取り組みが活発になってきています。
 今回の調査は、1968年〜1992年に建築された首都圏(千葉県、神奈川県)の公団住宅6棟を対象にプラスチック建材の使用量を用途別、部材別に明らかにしたもので、昨年同協会が実施した戸建住宅における排出量調査(本誌No.47参照)に続く第二弾。一連の調査により住宅用プラスチック建材全体の排出実態と将来の排出予測、さらには再資源化へ向けての課題などが浮き彫りになっており、建設廃棄物の有効利用を促進する上で大きな意味を持つデータといえます。
 

●調査結果のポイント

 
  昨年の戸建住宅調査の結果とも比較しながら、調査結果の概要をご紹介します。
(1)共同住宅のプラスチック建材使用量
 原単位(床面積平方メートル当たりの使用重量kg)の合計は1.88kg/平方メートルでした(表1)。戸建住宅(2.56kg/平方メートル)の使用量に比べて小さくなっていますが、これは屋根・外壁などに使われるプラスチックが戸建住宅に比べて著しく少ないためで、他の部分については両者とも大きな違いは見られません。
 調査前には、新しい住宅ほどプラスチック建材の使用量も多くなると予測されましたが、建築年の古い共同住宅では補修・改装が行われていることが多く、建築年との明らかな相関は認められませんでした。

(2)将来の排出量の予測
 上記の原単位調査結果と、国土交通省の「建設廃棄物排出量の将来予測」における滅失床面積(解体、災害などで消失する建物の床面積)などを基に、プラスチック建材の排出予測を試算すると、現状の7万トン程度から、2020年頃には10万トン(うち共同住宅で約2万トン)を超えるものと見込まれます(図1)。しかし、その伸び方は当初予想されたほど大きくはなく、住宅用プラスチック建材の排出量は現時点でほぼ一定レベルに近づいているとみられます。
 品目別ではビニル壁紙、配管材の増加が大きくなっています(図2)。

(3)再資源化へ向けての課題
 解体で排出される住宅用プラスチック建材の中で、現在処理・再資源化ルートがほぼ確立されているのは、電線、塩化ビニル管・継手および押出発泡ポリスチレン(断熱材)などで、排出量全体に占める割合は約1/3(表2のグループA)。
 また再資源化の試行段階にあるのは、ビニル壁紙、雨樋、床材などで、これもほぼ1/3となっています(同グループB)。それ以外はいわゆる建設混合廃棄物で、素材と複合化したり分別が困難だったりして、マテリアルリサイクルには多大な困難を伴うため、大半は埋立処分されているのが現状です。
 以上から判断すると、今後排出の増加が予想されるビニル壁紙などの再資源化ルートの確立と同時に、エネルギー回収を含めた建設混合廃棄物の適正処理が大きな課題になると考えられます。

 

●きっちり回収して適正処理を

 
  調査を担当したプラスチック処理促進協会調査部の加納芳明部長は、今回の結果について次のように補足しています。
 「今回の調査では、プラスチック建材の廃棄量は現状から極端に増えそうもないという排出予測ができたこと、また適正処理の重要性という課題がさらにはっきり見えてきたことが大きな収穫だ。昨年の戸建調査結果と同様、共同住宅でも塩ビ建材の使用量は多いが、これは建築資材として塩ビがそれだけ優れているということであり、やはりきっちり回収して適正処理することが何より肝心だと思う」