2004年9月 No.50
 
ちょっと拝見、塩ビサイディングを使った外張り断熱住宅
― リフォーム中心に静かな人気 ―

「錆びない、割れない」
塩ビサイディングが可能にした沿岸寒冷地の高断熱、高気密住宅の住み心地

  新時代の外壁材・塩ビサイディングを使った外張り断熱住宅がリフォームを中心に静かな広がりを見せています。耐久性に優れ、錆びたりひび割れたりすることがない塩ビサイディングが可能にした高断熱、高気密住宅の住み心地とは?。完成間もない山形県酒田市の外張り断熱リフォーム住宅にお邪魔して、関係者にお話をうかがいました。

 

●最上川河口の強風へも対応

 
  今回拝見した外張り断熱リフォーム住宅は酒田市入船町にお住まいの加藤一幸さんのお宅。築15年を経て窯業系外壁の痛みが激しくなり、知り合いの施工業者に相談したところ塩ビサイディングを使った外張り断熱をすすめられたといいます。
 相談を受けた有限会社親和創建(鶴岡市)の大滝典子取締役(トータルアドバイザー)は、早くから塩ビサイディングの可能性に注目していた一人。
 「3年前に仙台市で開催された塩ビサイディングのセミナーに参加してから、寒さや塩害のひどい海辺の住宅にはうってつけだし、リフォームにも適した建材だと考えていた。加藤さんのお宅は最上川の河口にあり、冬場は海から吹き付ける強風で寒さも厳しく塩害もひどい。一般的な外壁材ではどうしても風化してしまうので、何かいい方法はと考えているうちに塩ビサイディングに思いあたり、メーカーとも相談した上で加藤さんにアドバイスした」
 工事は2カ月間かけて昨年12月に完了。断熱性、気密性を高めるために、開口部には二重ガラスの塩ビサッシを使ったほか、家の中にはオール電化方式を採用。料金が普通電力の4分の1という深夜電力を利用して給湯と暖房を行う蓄熱電気温水器で20〜22℃程度に暖められた家の中は、廊下もトイレもほとんど温度差がなく、暖房のスイッチを切っても2日ぐらいは余熱で15℃の室温を維持します。もちろん、こうした高い住宅性能はきちんとした施工技術とそれをサポートしてくれるそれぞれのパーツ、断熱材、塩ビサッシ、塩ビサイディング他がなければ発揮されません。
 また、外張り断熱リフォームは工事の方法も独特で、親和創建の五十嵐透社長の話では、「普通、家屋の改修工事は柱だけ残してほかはすべて解体するが、今回いじったのは外側だけ。東西南北の壁面を順々に解体して下地補強、断熱材などを入れて、最後に外壁を施工するやり方で、家の中を傷めることなく、施主には普通に生活してもらった。これも外張り断熱だからこそで、今後のメンテナンスは塩ビサイディングだから安心していられる」とのことです。

 

●きちんとした情報提供が普及のカギ

 
  「施工費は多少高くなるがランニングコストを考えれば絶対得。それにこの快適性を考えれば施工費用は問題にならない。亡くなった父が建てた家で父の思い出もありはじめは手を加えるのにためらいもあったが、思い切ってリフォームしてほんとによかった。家の中は暖かいというよりも寒くないと言ったほうがいい適度な温度で、夜中にトイレに行くのも朝の支度も億劫でなくなった。また、塩ビサッシのおかげでひどい吹雪の日でも家の中は静かで結露もない。冬だけでなく夏場のエアコンも冷房にしないで除湿だけでも涼しさが保たれる」と、現在の住み心地を説明する加藤さん。
 同居するお母さんも、「前の家の寒さに比べたら快適そのもの。冬でもコタツもいらないし、いちいち部屋の戸を閉めなくていい。動き回ると熱くなるくらい」と大満足の様子です。
 五十嵐社長は外張り断熱住宅の可能性について、「塩ビサイディングによる外張り断熱住宅は山形県内でも増えているが、全体から見ればまだごく一部。室温の差によるトイレなどでの死亡事故を防ぐという点でも、外張り断熱の需要は必ず広がると思う。できれば、メーカーには和風住宅に合うようなサイディングのデザインを開発してほしい」と話しています。
 一方、大滝取締役は普及の条件として情報提供の必要性を指摘します。
 「残念ながら紛い物のような外張り断熱も結構あって、ときには技術のない施工業者がいいかげんにリフォーム工事をしている例も見られる。ちゃんとした外張り断熱を普及するためにはやはりきちんとした情報提供が欠かせない。高気密、高断熱というメリットだけでなく、それ故の注意点、例えば、開放型のストーブやファンヒーターはガスや水蒸気を放出するので使わないようにとか、空調をきちんとやるようにとか、夏場は暑い外気を取り入れると逆に熱がこもってしまうので南面の窓はすだれやカーテンで遮ってやるようにとか、プラスマイナス両方をきちんと住まう方に説明していかないと、いくら良い家でも誤ったイメージを広めてしまうことになりかねない」。
 親和創建では既に2棟の塩ビサイディングによる外張り断熱リフォームを手がけているほか、地元鶴岡市では新築住宅も完成したばかり。寒さの厳しい北国で、塩ビサイディングの外張り断熱住宅は着実に広がる気配を見せています。