2004年9月 No.50
 
 

 (株)カムテックス(広島県)のリサイクル発電
   塩ビを含む産廃焼却エネルギーで、出力5,000kW、国内最大級の発電を実現

 

    今回は久しぶりにサーマルリサイクルの現場から。塩ビを含む産業廃棄物を焼却して、その熱エネルギーをリサイクル発電に利用する(株)カムテックス(本社=広島県沼隈郡沼隈町常石)の取り組みが話題。同社の福山工場(福山市箕沖町107−5/TEL. 084−954−6700)から事業の現状を報告します。  

 

工場内消費電力の全量を賄う

 
  カムテックスが取り組むリサイクル発電は、出力およそ5,000kW。産業廃棄物による発電としては、大阪府の(株)ダイカン(1,400kW)、東京都の(株)シンシア品川R・Cセンター(990kW)などを上回る国内最大級の施設です。現在、福山工場内の電力はほぼ全量がこのリサイクル発電で賄われており、同社業務部の曽我友成業務課長の説明では、「外部の電力会社から電気を買う必要はほとんどなく、その経済効果は年間約7億円分に相当する」といいます。
 カムテックスは、中堅造船メーカーである常石造船の子会社として昭和42年に設立された会社で、もともとはタンカーやケミカル船のタンククリーニングサービスが本業。船舶廃油やタンカーのクリーニング廃液などの焼却処理では現在でもトップクラスの技術を有しており、平成9年には、日本海で起きたナホトカ号の重油流出事故に際して海洋汚染防止作業に携わった功績に対し、当時の古賀誠運輸大臣から感謝状が贈られています。
 しかし、タンククリーニング事業の需要が東南アジアの企業に押されて減少傾向に転じたことなどから、昭和50年以降は産業廃棄物の焼却・埋立処分に事業のウエイトを移行。その後、ダイオキシンの規制強化や循環型社会に向けた動きに呼応して、新たな焼却設備の建設を計画し、焼却・溶融・発電までを含む一貫処理システムを平成14年12月から操業させています。

 

塩ビ100%でも受け入れ可能

 
  カムテックス福山工場が扱う産業廃棄物の中身は、建設廃棄物、自動車や家電製品のシュレッダーダスト、廃プラスチック類などの固形物が主で、ほかに廃油、廃酸、廃アルカリなどの廃液類も処理対象となっています。固形物の中には、シュレッダーダストや建設混合廃棄物の中に相当量の塩ビ(ワイヤハーネスや壁紙など)が含まれていますが、同社では「あまり大量でない限り塩ビ100%でも受け入れ可能」としています。
 「産廃処理業者は設備の腐食など塩素系のプラスチックを嫌う傾向があるが、当社は以前から塩ビ系塗料の処理などをやっていて、塩素に対応した技術は確立している。受け入れに際しては、事前に行う塩素量の分析結果に応じて処理料金が違ってくるが、塩ビが多いということで受け入れを断ることはない」(曽我課長)
 集められた廃棄物は、産廃処理施設としては国内最大規模を誇る7,000?の貯留ピットで焼却発熱量および塩素量などを大まかに調整した後、焼却炉に投入されます。また、併設されたドラム破砕投入設備(96トン/日)からも塗料などの廃溶剤類が送り込まれます。この設備は廃溶剤の入ったドラム缶を丸ごと破砕してパイプラインで直接炉に投入するもので、日本で唯一のシステムです。

発電効率10%以上、産廃系では高レベル

 
  焼却施設は回転ストーカー炉と二次燃焼炉を組み合わせたシステムで、処理能力は170トン/日の2系列で340トン。焼却温度はストーカー炉が約1,000℃、二次燃焼炉が約850℃で、炉の周囲にめぐらしたボイラーチューブの中に水を循環させて排熱を吸収、スチームタービンを回し発電する仕組みです。
 発電効率は10%以上。自治体などの一般都市ごみによるリサイクル発電の場合、出力1万kW以上、発電効率20%以上といったケースも珍しくありませんが、「塩素ガスなど腐食性のガスが多いため蒸気の温度を300℃以上に上げられない」という制約のある産廃系発電としては、この数字はむしろ高レベルなほうで、経済産業省からは同社の発電設備に対して補助金が支給されているとのことです。
 なお、燃殻や煤塵は1,400℃の溶融炉(60トン/日×2基)でスラグ化され、構内に有する自社専用の管理型最終処分場(容量40万?)に埋め立てられます。排ガスは中和処理しているほか、ダイオキシン対策としても減温塔による急冷と分解触媒装置の利用で大きく基準値をクリアしています。

   

「びんごエコタウン構想」の中核施設

 
  現在広島県では、カムテックス福山工場のある箕沖工業団地を中核とする「びんごエコタウン構想」に取り組んでいます。この事業は、「循環型施設を集約し、産業間の連携、研究開発機能の充実を図ることで新たな環境ビジネスを創出」しようというもので、同社のリサイクル発電も「リサイクルできない廃棄物を集めて発電に利用するサーマルリサイクル施設」として、「構想」の中で大きな位置を占めています。周辺には既に廃プラ高炉原料化施設、RDF(固形燃料)発電施設、食品トレーリサイクル施設などが稼働しており、将来的には、工業団地内の企業間で熱エネルギーを流通し合う計画も浮上してきているとのこと。
 「福山工場では昨年8月に国際標準規格ISO14001(環境マネジメント)を認証取得しており、今後とも環境負荷の低減と循環型社会へ向けた取り組み強化は必須の課題。当面の課題は、一日50〜60トン排出するスラグのリサイクルだが、これは間もなく製品化できる見込みが立っている。また、飛灰から重金属を回収して再利用する研究も非鉄金属メーカーとの間で進んでいる」(曽我課長)
 福山工場の処理実績は操業間もない平成15年度こそ約7万トンにとどまったものの、今年度は10万トンを超える見通し。これに伴ってリサイクル発電も着実に拡大していくものと考えられます。