2002年3月 No.40
 

 塩ビ壁紙のリサイクル・ブロックが、屋上緑化にひと役

  ヒートアイランド解消へ、東京・渋谷区が注目の実験。リサイクル製品の流通促進も視野に

    都市のヒートアイランド現象が問題となる中、屋上緑化の取り組みが新たな環境対策として注目されています。東京・渋谷区では、全国の自治体に先駆けて区役所庁舎の屋上を利用した緑化実験が進められており、塩ビ壁紙のリサイクル・ブロックが菜園の外壁材として実験に貢献しています。  

 

条例改正で屋上緑化を義務づけ

  屋上緑化技術は、建物の屋上を植物で覆い、室内の冷房を弱めて人工的な熱の排出を少なくすることにより、ヒートアイランド解消やエネルギー資源の節約に役立てようというもの。冬場の保温効果も大きいと言われます。渋谷区では、平成13年4月1日にそれまでの「東京都渋谷区緑化推進条例」を「渋谷区みどりの確保に関する条例」に改正、区内で300平方メートル以上の敷地に新築または増改築する建物に屋上緑化を義務づけると同時に、昨年6月からは神南分庁舎の屋上(320平方メートル)に和風庭園、芝生庭園、実験菜園農場などを整備して、自ら緑化実験に着手しました。
 実験を統括する渋谷区役所環境保全課の緑化推進主査・小嶋和好氏の説明。―この実験は、施工方法や管理方法などの研究データを蓄積して屋上緑化の具体的プランを区民に提示するのが目的。施工には塩ビをはじめ様々なリサイクル製品を利用している。これは、行政が率先してリサイクル製品の活用の場を作ることでその流通を促進したいから。昨年5月に関係業界に呼びかけ、屋上緑化施工協力環境ボランティア企業として29社に参加してもらった。屋上緑化は地上緑化とは全く異なる技術が必要で、特に重量に制限があるため軽量化の技術研究が欠かせない。企業の参画を募ることで、技術情報が行政に集まるし、企業交流の場が広がるというメリットがある。

 

トキワT.E.Cの「パイン・ブロック」

  その実験菜園農場のひとつに利用されているのが、塩ビ壁紙メーカーのトキワ工業?(本社:大阪)が開発した「パイン・ブロック」。塩ビ壁紙の廃材をセメントで固めたリサイクル製品で、「樹脂と紙を分離しないでそのまま粉砕加工しているためコストが安く、一般のブロックに比べ軽くて施工が簡単。再リサイクルも可能だ」と、開発を担当しているトキワT.E.C(株)の石坂昌之社長はその利点を説明します。
 渋谷区の実験は、マスコミの取材や自治体関係者、一般区民からの反響も大きく、夏場の室温低下効果についても「緑化することにより9℃の差が生じるという期待どおりのデータが得られている」(小嶋主査)とのことですが、今後の課題としては小嶋主査、石坂社長ともに「さらなる軽量化」と声をそろえます。トキワT.E.Cでは既に比重1.2の軽量ブロックを開発しているほか、塩ビ比率を現在の30%から40%にまで高めて、一般家屋やマンションのベランダ菜園での利用を広めたい考え。
 「屋上緑化には土壌に至るまで各企業が技術の粋を尽くしている。この技術の普及を目的に、この4月には関係企業が集合してリファームコンサルタント協会を設立する」(石坂社長)
 渋谷区のほかにも、板橋区、大田区、墨田区などで緑化実験が予定されているという屋上緑化の試み。ヒートアイランドの解消に塩ビがどんな役割を担っていくのか、今後の動きが注目されます。