2001年12月 No.39
 

 渡辺正東大教授「環境の時代―逆転の発想」

  環境問題の“定説”を疑え―日本ビニル工業会創立50周年記念講演から

  

  日本ビニル工業会(岡本多計彦会長)の創立50周年記念講演会が、10月10日に東京・千代田区大手町の経団連会館で開かれ、東京大学生産技術研究所の渡辺正教授が「環境の時代―逆転の発想」と題して講演を行いました。  

物事を複眼的に捉える思考を

  渡辺教授の講演は、環境問題における様々な“定説”を考え直すことで、真に科学的な「ものの見方とは何か」を問いかけたもの。
 話の中で渡辺教授は、
 「環境科学はまだ学問としての歴史が浅く、実は殆どの問題で明確な定説はまだできていない。未解明の問題を俗耳に入りやすいホラー話に仕立てて煽るマスコミ報道は、科学というより一種の社会現象、風評の域の話であり、真理と思われている定説でも裏を調べてみると怪しい情報に依っていることが多い」と述べた上で、
 「かつて森を枯らす酸性雨が大問題になったが、最近ではマスコミもあまり報じない。森林枯渇の真の犯人は殆どの場合自動車の排気ガスであることが分かってきたためだ。地球温暖化は基本的には太陽活動と都市化の影響だし、データによっては地球の平均気温が殆ど上がってないことを示すものもある」と、具体的な事例を説明。
 また、DDTの問題に言及した場面では、「かつて250万人だったスリランカのマラリア患者はDDTのお陰で20人程度に激減したが、散布禁止になったとたん以前のレベルに逆戻りしてしまった。DDTを禁止したことが本当に正しかったのか」として、物事をプラスとマイナスの両面から複眼的に捉える思考の大切さを訴えました。

 

ダイオキシンは「一種の天然物」

  さらに教授は、“史上最強の毒物”と言われるダイオキシンについても、「ダイオキシンに最も弱いモルモットは体重1キロ当たり1マイクログラム(100万分の1グラム)で50%の死亡確率とされるが、人間の場合、体重70キロの人で食物から1日に摂取する量を100ピコグラム(1兆分の100グラム)として、モルモットの危険ラインに達するには千数百年分の食い物を一気食いしなければならない」また、「来年から施行されるダイオキシン対策特別措置法で、人間の1日耐容摂取量を体重1キログラム当たり4ピコグラムとしているのはサイエンスの裏付けのない規制だと思う」と指摘。その上で、
 「ダイオキシンが近代の化学産業や焼却施設から生まれた副産物と考えるのは間違いだ。木でも草でも、炭素と酸素と水素と塩素という平凡な4元素を含むものが高温にさらされればダイオキシンは必ず一定の割合で生成する。農薬などの影響で20世紀になって増えたことは事実だが、太古の山火事でも古代人のたき火でもダイオキシンは発生したのであり、一種の天然物と見ても構わない」と述べて、冷静さを欠いた最近の社会的な動きを戒めました。