2000年12月 No.35
 
農ビのリサイクル率、51%に(平成11年度)

適正処理の機運をバネに向上。再生技術と用途開発、処理費負担などが今後の課題

 

農業用ビニル(以下、農ビ)のリサイクル率が平成11年度の実績で51%に達したことが、農林水産省の調べで分かりました。使用済み農ビの回収・リサイクルについては、既に40年以上にわたって各地域ごとに進められてきましたが、昨年7月には農ビメーカー7社と全国農業協同組合連合会の共同で農ビリサイクル促進協会(NAC)も発足、各地の推進協議会と連携して100%完全リサイクルの実現へ向けた活動を開始しており、こうした適正処理に対する機運の高まりもリサイクル向上にはずみをつけた要因と考えられます。最近の農ビリサイクルの動向と今後の課題などについて農林水産省所管の(社)日本施設園芸協会技術部長、佐藤仁氏に解説していただきました。

最近の農ビリサイクルの動向と今後の課題

社団法人 日本施設園芸協会技術部長 
 佐藤 仁氏  

■ 組織化進む、市町村推進協議会

 
  平成12年夏、農林水産省野菜振興課が調査した「園芸用ガラス室、ハウス等の設置状況」が発表された。この調査は30年以上前から隔年に、わが国の施設園芸の実態を項目別に、各都道府県の協力を得て実施されている。
 これによると、農ビの再生処理率はここ数年間45%と停滞ぎみであったが、平成11年度は51%に増加した。(農業用使用済プラスチックの再生処理率は全体で35%、うち農ビが51%、ポリエチフィルムが17%となっている。)
 施設園芸ハウスの被覆材は、廃プラの排出量を少しでも少なくしようという観点もあって、長期展張品が増えており、廃プラの排出量も減少傾向にある。しかも、これだけ再生処理率が伸びたということは、施設園芸分野における廃プラ適正処理に対する機運の高まりに違いない。現実に、推進母体となる市町村推進協議会も、74%の地域で組織化され、前向きに取組が進められたことも大きな要因であろう。(表1、図、表2、表3参照)

 

■ 用途開発では塩ビ業界の役割に期待

 

  農ビの再生処理率が50%を超えた。他の業種でこれだけの大きな数字があるのだろうか。農ビはわが国施設園芸被覆材の歴史を作ってきたわけで、早くから業界あげて適正処理とりわけ再生原料化に力を注いできた。この苦労の賜物といってよい。
 再生化技術は、小型で移動式の処理施設等かなり進んできた。しかし、100%に近い再生を目指すには、再生原料の新しい用途開発がポイントと思える。電線用への適用など開発が始まっているので、塩ビ業界の取組、成果に期待したい。
 それに、収集運搬から再生原料化までのコスト低減を図ることが重要と考えられる。加えて処理費用の負担の問題がある。現在稼動の再生処理工場は、経営的には相当苦しいという。今まで処理費用は、園芸振興ということもあって、農家の負担は一部で、市町村やJAの拠出でまかなわれてきたケースが多かったが、限界にきていると思われる。受益者(農家)の適正な費用負担を、その徴収方法の仕組み作りとともに進めていく必要があろう。
 (社)日本施設園芸協会のなかで、廃プラ対策の担当、事務局にある者として、農ビは勿論のこと廃プラ全体の適正処理が、今後リサイクルという形で実現していくことに、関係者各位と連携を密に微力ながら努力していきたいと思っている。