1999年9月 No.30
 

 活発な動き続く、塩ビのマテリアルリサイクル

  使用済み農ビのリサイクル拡大へ組織整備や技術開発、クレジットカードでも日本初の試み

    フィードストックリサイクルの進展と平行して、マテリアルリサイクルの面でも、最近の塩ビ業界には活発な動きが目立っています。使用済み農ビの再生利用拡大へ向けた新組織の発足や技術開発、さらにはクレジットカードでも日本初の取り組みがスタート。塩ビのマテリアルリサイクルをめぐる最近の動きをご紹介します。  

 

使用済み農ビのリサイクル向上へ、農ビリサイクル促進協会(NAC)発足

  使用済み農業用ビニルフィルム(以下、使用済み農ビ)のリサイクル率向上を目的とする新組織「農ビリサイクル促進協会」(NAC)が、農ビメーカー7社と全国農業協同組合連合会(全農)との共同により7月6日付で設立されました。
  現在、農ビは全国で年間約10万トンが使用され、ほぼ同量が排出されていると推定されます。一方、リサイクルの面では既に約4万5,000トンが全国10カ所の使用済み農ビ再生処理施設でリサイクル原料として再生され、製品加工業者で床材、履物、各種シートなどの原料として再利用されており、他のプラスチック製品に比べて高いリサイクル率(45%)を達成しています。
  しかし、地域別の状況をみると、再生処理施設のある九州の一部地域のようにリサイクル率79%という高い実績を挙げているところがある一方、再生処理施設のない地域などではリサイクル率が低いなど地域間の格差が広がっていることも事実です。また、昨年12月には廃掃法が改正され、産業廃棄物管理票制度(マニフェスト)が使用済み農ビにも適用されることとなり、回収・処理の仕組みが未整備の地域については早急な推進体制の整備が求められております。
  NACは、こうした状況に対応して、農ビのリサイクルのさらなる推進のために設立されたもので、協会員はアキレス、オカモト、シーアイ化成、タフニック、チッソ、三井化学プラテック、三菱化学MKVの農ビメーカー7社と、施設園芸農家を代表する立場としての全農です。
  具体的な活動目標は、(1)使用済み農ビのリサイクル率を2001年までに70%に高める、(2)将来的には100%の完全リサイクル達成を目指すの2点で、NACでは今後目標実現へ向け、全国レベルでの回収・処理システムの構築や、新しい処理技術・用途開発などの調査研究を積極的に展開していく計画。なお、初代会長には三菱化学MKV小林純社長が就任し、東京都港区元赤坂の東部ビル内に事務局が開設されています(電話03-5775-2051)。

 

ビザとVECがクレジットカードのリサイクルに着手

  世界最大のカード会社であるビザ・インターナショナル(東京事務所:東京都千代田区内幸町)は、ビザ・カードを発行する全てのクレジットカード会社・団体9社および塩ビ工業・環境協会(VEC)とが協力して、この7月から塩ビ製クレジットカードのリサイクルに着手しました。クレジットカードのマテリアルリサイクルは日本初の試み。
  クレジットカードをはじめとするカード類は、その加工適性などから大半が塩ビ製で、ビザ・インターナショナルブランドで、現在世界で6億5,580万枚のカード(うち日本では6,380万枚)が発行されています。
  今回のリサイクル事業は、期限切れなどで不要となったカ−ドを、VECが提携している茨城県笠間市のリサイクル工場で床タイル等の建材などにリサイクルするものですが、さらにビザとVECでは、今後1年をめどとして使用済みカードを再びクレジットカードとしてリサイクルする可能性についても検討していく方針。
  また、将来的にはカード各社が設置するシュレッダー機能付回収装置「カードリサイクル・ポイント」を拠点に、各種カードを会員から回収してリサイクルしていくことも計画されており、電子マネー時代の最新リサイクル事例として各方面から反響が高まりそうです。
  このクレジットカードのリサイクルについて、9月4日、NHK「おはよう日本」まちかど好奇心のコーナーでリサイクルの現場が放映されました。
 

 

使用済み農ビをゴム原料にリサイクル、VECと日本ビニル工業会が新技術開発

  塩ビ工業・環境協会(VEC)と日本ビニル工業会は、(社)化学品検査協会の協力を得て使用済み農業用塩ビフィルムをゴムにブレンドする実用化技術の開発に成功しました。
  使用済み農ビを130℃以上でゴムにブレンド・混練するもので、農ビのゴムに対するブレンド率は10%〜50%。天然ゴムはもちろん、合成ゴム、熱可塑性エラストマーと種類を問わずブレンドできるのが特長で、品質面でも耐候性、耐油性、接着性などで従来のゴムを上回る特性が確認されています。また、使用済み農ビの原料価格はゴムの3分の1程度と見込まれるため、製造コストの大幅な低減も期待できます。
  主な用途としては、ベルトコンベアなどに使われる工業用ゴムやホースなどへの利用が考えられていますが、基本的にはタイヤ以外ならすべてのゴム製品に利用することが可能で、使用後の製品を再びマテリアルリサイクルすることもできます。
  使用済み農ビのブレンドの対象となるゴムの市場規模は年間約50万トンと想定されますので、使用済み農ビの使用量は年間5万トン以上の使用が見込まれます。前項の記事でも触れたとおり、現在農ビは年間約10万トンの排出があり、4万5,000トン程度が床材、靴底、字消し(消しゴム)などにリサイクルされていますが、今回の技術開発により、更に農ビのリサイクル率が大幅に向上することが期待されます。
  なお、今回の技術開発の成果は、一部ゴム加工メーカーにおいて既に実用テスト段階に入っており、協会としては一層の普及を図っていく予定です。