1999年9月 No.30
 

 大きく前進、トクヤマとの「塩ビリサイクル技術開発」

  塩化水素の再利用と脱塩化水素樹脂のセメント原燃料化へ、実証プラント竣工

    総合化学メーカーの?トクヤマ(三浦勇一社長:本社=東京都渋谷区)と(社)プラスチック処理促進協会、および塩ビ工業・環境協会(VEC)、当協議会(JPEC)の4者が、昨年5月から共同で取り組んでいる「廃塩ビのリサイクル技術開発」に関するプロジェクトが、いよいよ本格的に動きはじめました。山口県徳山市の(株)トクヤマ徳山製造所東工場内に塩ビリサイクル実証プラントが完成し、去る7月8日に関係者を集めて竣工式を挙行。高炉原料化と並ぶ注目の塩ビリサイクル技術は、実用化に向けて大きく前進することとなりました。  

 

循環型リサイクルめざす、国内初の試み

  共同開発を進めている「廃塩ビのリサイクル技術」は、
(1) 塩ビを粉砕・熱分解して塩化水素を分離する脱塩化水素技術
(2) 回収した塩化水素を塩ビモノマーの製造原料に再利用するオキシ塩素化原料技術
(3) 残りの脱塩化水素樹脂をセメント製造の燃料および原料として再利用する原燃料化技術
の3つを柱とした、文字どおり循環型リサイクルの完成をめざすもので、中でも、回収した塩化水素を再び塩ビモノマーの原料に利用する技術開発は、塩ビのフィードストックリサイクルを進める上で画期的な試みと言えます。
  また、脱塩化水素後の樹脂(残渣)をセメントの原燃料として用いるのも、国内では初の試みで、廃塩ビの有効利用のみならず、セメントの製造に使われる石炭などの資源節約という点でも大きな意味を持っています。

 

9カ月間かけて種々のデータ採取

  このほど完成した実証プラントは、昨年11月に建設を開始したもので、処理能力は1日1.5トン(年500トン)。処理フローは図に示したとおりで、パイプ、窓枠などの硬質塩ビやフィルム、シートなどの軟質塩ビを15mm以下に破砕して、脱塩化水素炉で350℃で加熱した後、塩化水素は様々な処理を経て塩ビモノマーの製造工程で再利用されます。一方、脱塩化水素後の樹脂(残渣)は、セメント原燃料としてそのまま利用されることになります。
  実証プラントは当面昼間のみの運転で、来年3月まで9カ月間をかけて、効率的な脱塩化水素技術の開発や回収した塩化水素の成分分析などを中心に、セメント原燃料として塩ビを利用するための技術の確立、システム全体の性能や経済性、安全性の確認など、実用化へ向けて種々の取り組みが続けられる予定です。

 

 

竣工式でプロジェクトの進展を祈念

  8日朝に行われた実証プラントの竣工式には、関係者およそ40人が参列し、トクヤマの三浦社長を始め、VECの佐々木専務理事、プラスチック処理促進協会の蕨岡専務理事、当協議会の橋本運営委員会副委員長、工事を担当した月島機械の田原社長らが次々に玉串を奉納して、プロジェクトの順調な進展を祈念しました。
  また、式の後に開かれた懇親会では、三浦社長が「塩ビのリサイクル技術開発のパートナーとして当社をご指名いただき、光栄に思うと同時に大変な責任を感じる。実証プラントの完成はプロジェクトの第2段階と言えるが、ここ数年、当社のセメント工場では大量の廃棄物を受け入れ、原燃料として有効利用しており、こうした利点を今後の技術開発にも生かしていきたい」と挨拶。続いて、佐々木専務理事も「現在国は住宅解体後の廃材についてリサイクルの法制化を検討中だが、セメント原燃料化はその際のフィードストックリサイクルの一環としても期待できる。塩ビについては一部にまだ誤った情報が流布されているが、そうした誤解を正すためにも、セメント原燃料化について積極的に情報提供していきたい」と述べ、全員でプラントの無事完成を祝い合いました。

 

塩ビ含め年10万トンの廃プラ受入れ

  トクヤマは、従来から廃タイヤ、石炭灰、汚泥などをセメント製造用の原燃料として有効に利用するなど、資源のリサイクルに積極的な方針を取ってきました。特に、平成7年からは塩ビ以外の廃プラスチックの利用も進めてきており、先の三浦社長の言葉どおり、こうした技術の蓄積が塩ビの原燃料化にも大いに役立てられることになります。
  塩ビ以外の廃プラスチックについては、別途建設が進められている年1万5,000トン規模の廃プラスチックリサイクル燃料化プラントが8月には稼働の予定で、今回の塩ビリサイクルのプロジェクトが完成すれば、将来は塩ビの脱塩化水素後の樹脂も含めて年10万トンの廃プラスチックの受け入れをめざす計画。
  実証プラントの企画、建設に中心的な役割を果たしてきた経営企画室の梶山裕久氏(企画グループ主幹)は今後の見通しについて、「プロジェクトでは来年3月まで様々な技術的問題を確認しなければならないが、実用化に向けては、廃塩ビの収集も検討課題になる。どの程度の品質のものがどれだけコンスタントに集まるのか、原料の安定確保に目処をつけたいが、JPECをはじめ協会の協力が不可欠だ」と話しています。
  今回の共同研究により、その実用化の可能性が確認されれば、近い将来、塩ビのリサイクルは他のセメントメーカーなどへも普及していくことが期待されます。