1999年3月 No.28
 
 

 最先端、(株)鹿沼環境美化センターのごみ発電事業
   発電能力2,400kw/h。場内エネルギーの自給だけでなく、東京電力へ売電も

 

    昭和62年に創業された鹿沼環境美化センター(栃木県鹿沼市下石川737−55、TEL.0289−76−1567)は、産廃処理によるごみ発電の第1号。その取り組みには、我が国で最も先進的なサーマルリサイクルの在り方を見ることができます。  

 

一般都市ごみも受託処理

  ごみ発電とは、廃棄物を焼却する際に出る熱エネルギーを蒸気として回収し、これを電力に変換するサーマルリサイクルのひとつです。
  鹿沼環境美化センターの取り組みが先進的と言われる理由は、ごみ発電で得られた電力を場内エネルギー用に自給するだけでなく、余剰電力を東京電力に売電して利益を上げている点にあります。
  また、産業廃棄物だけでなく、自治体から出る一般都市ごみの焼却処理を請け負っているのも鹿沼環境美化センターの特徴です。同センターが都市ごみ処理の認可を受けたのは平成2年のことで、これも日本で初めてのケースでした。
  同センターでは、これまでに地元鹿沼市をはじめ、千葉県、栃木県、茨城県、静岡県など関東近県の自治体から一般可燃ごみや事業系一般廃棄物の処理を受託してきた実績を持っていますが、焼却炉の建て替えなどに伴う臨時処理が多く、「自治体の定期受け入れを増やしていくのが、これからの大切な仕事だ」と、同センターの伊藤寛専務は説明しています。

 

■ 1,000kwを場内供給

  鹿沼環境美化センターの焼却設備は、移動床炉方式の一般都市ごみ用(処理能力=1日134トン)と、ロータリーキルン方式を用いた産廃用(同94トン)の2つのラインで構成されています。
  伊藤専務によれば、「焼却炉そのものはアメリカ(一般ごみ用)、オーストリア(産廃用)の技術をそれぞれ導入しているが、プラント全体は月島機械の設計で、炉の機能についても日本のごみ事情に合わせて月島機械が独自の改良を加えている」とのことです。
  この最新鋭の設備は、資源エネルギー庁の廃棄物発電補助事業の指定を受けており、去年5月から本格営業運転に入りました。
  処理工程は、2ラインとも基本的には同様で(図参照)、焼却、ガス処理、発電の3つの設備から成り、発電設備のみ2つのラインで共用する方式となっています。
  このうち発電工程では、それぞれのラインから廃熱ボイラーで回収されたエネルギーが蒸気として発電設備に集められ、タービン発電機を使って発電が行われます。発電能力は1時間2,400kwで、基本的には1,000kwを場内供給し、残りの余剰電力1,400kwが東電に売却されますが、売電の量は、その時々のごみのカロリーによって異なります。

■ ダイオキシン対策も万全

 
  ごみ発電で最も大切なことは、供給する電力の量を安定的に維持することです。このため鹿沼環境美化センターでは、ごみを破砕した後、カロリーを安定させるためピットで十分に混合するなど、ごみの組成に合わせて注意深く運転を管理しています。
  「東電からは7〜9月の昼間だけは安定的に供給することが要求されるが、これは現在の設備で十分対応できる。昨年は、1,100kwを供給した。売電価格は年間1億円以下で決して高利益とは言えないが、場内エネルギーの自給など、長い目で見ればプラスになっていると思う」(伊藤専務)。
  ごみの種類は、産廃の場合、廃プラ、廃油、汚泥などのほか、紙 ・繊維くずなどが中心で、ごみ発電をする上では汚泥の量がやや多いのが問題とのこと。廃プラのうちの塩ビの量は不明ですが、パイプ類、樋、農業用ビニルなどが多く、特に農ビについては、鹿沼市がニラ、イチゴの有数の産地であるため、処理に困った近隣の農家が個別に直接持ち込むケースも増えているといいます。
  もちろん、環境面でも慎重な対策が施されています。ごみは一次〜二次焼却を通じて1,150℃前後の高温でガス中の有害物質まで完全燃焼させるほか(滞留時間は約5秒)、ガス処理工程では、ダイオキシンの二次合成を防ぐため反応塔で170℃まで排ガスを急冷し ・yぢ消石灰を噴霧した後 ・yぢバグフィルターを使って無害化処理されます。
  この結果、ダイオキシンの排出値も産廃用の炉で0.092ng-TEQ/Nm
3、都市ごみの炉で0.19ng-TEQ/Nm3と、国の排出基準はもとより、最も厳しいと言われるドイツやオーストリアなどの規制も十分クリアできる値となっています。なお、都市ごみ用の値がやや高くなっているのは、生ごみの量が多く焼却温度が低くなるためです。

   

■ 鹿沼方式は将来必ず広がっていく

 
  現在、本設備を設計・施工した月島機械(株)が、鹿沼環境美化センターの隣接地において、処理規模1日20トンの次世代型ガス化溶融炉を建設しており、この3月には完成するとのことです。
  なお、この設備では、焼却残渣を高温溶融して、エコロック(人工石材)として敷石などに利用できるとのことです。
  こうした計画が実現すれば、中間処理だけでなく、最終処分まで可能となるため、鹿沼環境美化センターとしても注目しております。。
  「最近は事業系の一般廃棄物の増加が問題になっているが、ISO14000を取得している企業などは、工場全体のリサイクル率を上げるため、自治体に出すより高い処理費を払ってでも、当社に持ち込むというケースが増えている。当社のリサイクル事業に対する自治体や同業者の関心は高く、産廃と一廃を併せて処理しながら熱エネルギーをごみ発電に利用し、一方で余剰電力を売却して利益を得るという方式は、将来必ず広がっていくと思う」と、伊藤専務は確信を込めて語ってくれました。