1998年6月 No.25
 
 

 新潟プラスチック油化センターの現状
   最終段階に入った注目の油化実験、塩ビを含む混合廃プラを安全、無公害に処理

 

   (社)プラスチック処理促進協会が、新潟市と同市の潤滑油メーカー・歴世礦油(株)の協力を得て、平成8年10月から取り組んできたプラスチック油化設備の実証試験が終了し、実用段階に入ってきました。2000年4月からスタートする「その他プラスチック」の再商品化に備えて、佳境を迎えた塩ビ混入廃プラリサイクルの新技術開発の現状を、新潟プラスチック油化センター(新潟市平和町3-1、TEL. 025-272-2525)に取材しました。  

世界最先端の油化技術

  新潟プラスチック油化センターは、「次世代廃プラスチック液化技術開発プロジェクト」の一環として建設されたもので(技術開発主体はプラ処理協、設備の設計・建設は千代田化工建設とシナネン、施設は歴世礦油に所属)、平成8年10月から足かけ3年にわたってプラントの実証試験が進められてきました。
  この設備の最大の特徴は、新潟市の一般家庭から出るプラスチック廃棄物を塩ビも含めてそのまま混合処理するという点にあります。
  廃プラスチックの油化技術として、塩ビを除いて処理する設備の事例はしばしば散見されますが、高度な脱塩化水素工程を備え、しかも50万人規模の大都市から出る都市ごみ系の廃プラスチックをまとめて安全、無公害に処理できる設備としては、新潟プラスチック油化センターが世界的にも最も進んだモデル事例のひとつと言うことができます。
  <インフォメーション>の頁でご紹介した高炉原料化技術と同様、総合的な廃プラスチックのリサイクルを可能にするという点で、今後の環境問題に果たす同センターの役割は極めて大きいと言わなければなりません。

 

■ A重油と軽質油ほぼ半々の割合

  今回の取材では、試験の状況について最新の情報を聞くことができましたが、プラ処理協サーマルリサイクル推進プロジェクト室の橘秀昭部長によれば、「最適条件下でフル操業を行うための、最終的なチェックを行っている」とのことで、現在、各工程ごとに詳細な分析を実施し、最後の詰めへ向けて急ピッチで作業が進められています。
  センターでは、新潟市の家庭から出されるプラスチック廃棄物の全量、年間約6,000トン(1日約20トン)の処理が行われていますが、この中には分別してリサイクルに回されるPETボトルも5%程度含まれており、その他、紛れ込んだ油化不適物や金属などを取り除くと、最終的には6,000トンのほぼ70%、約4,200トンが油化の対象になるとのことです。
  塩ビ廃棄物の混入量は平均してほぼ8%程度で、この塩ビを含む廃プラスチックの中から、およそ60%が石油に再生されます。
  また、生成される石油の品質は、A重油相当の油と軽質油がほぼ半々の割合で、歴世礦油の阿部哲雄管理部長の話では、「軽質油は施設内の加熱炉などで自家消費されているが、A重油は今後市の水族館など公的施設で利用される計画で、話し合いが進められている」とのことです。

■ 循環方式で高い脱塩化水素率を実現

 
  センターの施設は破砕や減容・フレーク処理などを行う前処理工程と、油化工程の2つから成り、前処理工程は昼間だけの運転、油化工程は24時間運転となっています。
  処理のフローは図に示したとおりですが、主なポイントについて説明しておくと、前処理工程ではPETボトルを手作業で選別しているほか、鉄やアルミなどの金属類、その他の油化不適物が、磁選機や風力選別機、アルミ選別機など幾重もの工程を重ねて慎重に取り除かれ、油化に適したフレーク状の原料に加工されます。
  一方、油化工程では、「何といっても脱塩化水素機が技術上の最大のポイント」(橘部長)。脱塩化水素機は2系列に分かれており、約300℃の温度で原料を溶融し、これを循環させることで高い脱塩化水素率を実現しています。熱分解の温度は約450℃で、分解に必要な熱は生成された軽質油を利用した加熱炉から効率的に供給されます。
  排ガスは1,000℃以上の高温で焼却された後、吸収塔、洗浄塔を経て塩化水素として塩酸が回収されますが(10%濃縮で2,000〜3,000トン)、回収塩酸の再利用も順調で、「地元の化学工業用の製品として出荷されている」(阿部部長)とのことです。なお、分解後の残渣についても、将来的には蒸気や熱エネルギー回収による再利用が検討されています。

   

■ 技術的な見通しを確認

 
  センターでは8月頃までには報告書をまとめる計画で、今後は歴世礦油と新潟市との間で完全に商業ベースの油化事業が行われることになるとのことですが、プラ処理協サーマルリサイクル推進プロジェクト室の梶光雄部長は、「容器包装リサイクル法の本格実施に備えて、塩ビを1割程度含む都市ごみ系の廃プラを安全、無公害に油化処理できる技術的な見通しはほぼついたと確信している」と、実験の成果に強い自信を示しています。