1998年6月 No.25
 

 ドイツ、オランダの塩ビ管廃材リサイクル状況

   対照的な両国の活動、日本も体制整備が急務
   ──パイプWGの「欧州調査報告書」から

 当協議会MR委員会のパイプワーキンググループ(荒井弘光主査)が、去る3月3日〜11日にかけて、ヨーロッパの塩ビ管廃材リサイクル状況を視察してきました。このほどまとめられた報告書から、調査結果のポイントをご紹介します。

 

 

● ヨーロッパにおける塩ビ製品の規制状況

  調査は、日本における塩ビ管廃材リサイクル実施計画立案のための参考情報収集を目的としたもの。視察先はドイツとオランダの業界団体(AGPU=ドイツの塩ビ環境団体、GKR=ドイツプラスチック管協会、FKS=オランダプラスチック配管システム製造業者連盟)、関係企業(KOBIG社=ドイツの建設資材商社で塩ビ管廃材の収集拠点、欧州最大の塩ビ管メーカーWAVIN社の粉砕工場=オランダ他)、マインツ市清掃局など。
  報告書によれば、「スイスのミネラルウォーターの容器以外、ドイツを含めヨーロッパで塩ビ製品の使用に関する法的な規制はない」(AGPUの説明)とのことです。また、「ドイツでは建物への塩ビ管の使用が禁じられている」という情報についてFKSに確認したところ、「地方によって禁止しているところもあったが現在は使用可能」との答えでした。


 

●  業界一体でリサイクル性PR(ドイツ)

  塩ビ業界の環境活動はドイツとオランダでかなり対照的な取り組みが進められているようです。ドイツでは『塩ビ製品はリサイクルできる』を決め手に、塩ビ業界全体が結束。一般市民の理解を得るため、塩ビの環境性(焼却時の二酸化炭素発生量や、製造時のエネルギー使用の少なさなど)のPRでもAGPUをはじめ積極的な活動を展開しており、その結果、「マスコミ報道も冷静で妥当な論調になり、塩ビ管はほぼ毎年需要増を記録。プラスチック管材の80%は依然として塩ビ管が占め、塩ビ包装材も90年当時の減退傾向から回復してきた」といいます。
  また、ドイツでリサイクルされる塩ビ管の量は年間約400トンで、主に黒色の配線用雑パイプに再生されますが、回収再生のための特別な設備は建設されていません。


 

● 政府との連携でリサイクル(オランダ)

  これに対してオランダの場合は、塩ビ管業界が個別に対応を進めており、政府と業界がタイアップして三層下水管へのリサイクルを推進するなど、PRよりもリサイクルに大きな資金を投入している点に特徴が見られます。塩ビ管業界は独自に分別粉砕工場を建設しているほか、FKSの加盟6社すべてが三層管製造ラインを設置しており、こうした活動の結果、「リサイクル量は年々増加し(年間約3,500トン)、塩ビ管不使用の動きもくい止めることができた」とのこと。
  また、オランダでは政府が全国環境法を定めて、業界との間にリサイクルや省エネ等の中期達成計画について協定を結ぶ一方、リサイクル技術研究に補助金を提供したり、三層下水管の規格化と普及を支援するなど、「課せられる課題も大きいが、広報を含め国の援助も大きい」のも特徴のひとつ。こうした両国の違いは、塩ビ管業者が6社と少ないオランダに対して、ドイツは販売店中心の流通形態であることなど、業界の構成の相違も大きな要因となっているようです。
  今回の調査結果について、報告書は「(塩ビ忌避の動きに対応する上では)両国のように、・塩ビはリサイクルできること、・廃材を処分したい時の連絡先、の2点を全国に広報することが急務」として、日本でも「一刻も早く体制を整備して実行に移す必要がある」ことを指摘しています。