1997年9月 No.22
 

《特別寄稿》 塩ビリサイクルの現場を訪ねて

化成品日報社記者 中山丈一氏

 去る7月4日、当協議会の主催により、塩ビのリサイクル事業の現状を視察するマスコミ見学会が開催されました。当協議会の塩ビ卵パックリサイクルWGの中間処理拠点でもある茨城県の(有)清田商店と、再生塩ビフレークの製品化に取り組む(株)東華の工場を訪れたもので、このほど、参加者の1人である化成品日報社の中山記者から詳細な感想文が寄せられました。塩ビのリサイクル事業に対する客観的な評価の一例として、その全文を掲載します。
 

● 産廃リサイクル事業化のモデル

 
 一般廃棄物、産業廃棄物ともに処理が社会問題化しており、その解決法が行政、民間がタイアップして実施に移されている。廃棄物は、人類が誕生して以来、排出し続けているもので、その代表的なものとしては古代遺跡の貝塚が上げられよう。
 また、その処理は古代から続いており、解決に人類は苦慮してきた。リサイクルによる廃棄物処理は、いま始まった問題ではなく、歴史的にみても実行されてきた。例えば、排泄物を肥料にするなどして利用してきたわけである。  20世紀に入り、爆発的に人口が増加、その結果、廃棄物も大量に排出するようになり、かつ科学技術の発達によって合成物が創出され、自然分解されることがなくなってから急速にクローズアップされてきた。現在、廃棄物処理を困難な問題にしている1つの原因として合成物が上げられる。
 合成物の処理について、分別回収を行い油化、マテリアル化、燃焼、埋め立てなどが実施されているが、コスト的に本格的な実用化は限られている。特に一般廃棄物では燃焼、埋め立てが一般的であるが、燃焼は炉の十分な確保、埋め立ては土地の確保などに加えて地球環境破壊の問題などがあり、決定的な解決策にはなっていない。その中にあって、塩ビ加工メーカーから出る端材は、分別化が比較的容易であり、経済的な規模の量に達すれば事業化も可能になっている。

 

● 「リサイクルはビジネス」を実践(清田商店)

 
 塩化ビニル樹脂は、最もポピュラーなプラスチックとして知られている。それだけ生活に密着している合成樹脂で、その廃棄物処理についても古くから研究され、燃焼、マテリアル化が進んでいる。資源の有効化を考慮すれば、マテリアル化、油化によるリサイクルが有望である。
 今回、塩化ビニル環境対策協議会の紹介によって工場見学に訪れた2社は、廃塩ビを回収、粉砕、微粉化の前処理を行う工場と、それを溶融、成型再加工、製品化する工場で、両者とも事業化に成功している企業として注目される。ともすれば、リサイクルは経済性を伴わず、事業化に踏み切るのに困難性を伴うとみられがちだが、回収方法、立地条件、市場確保さえできれば事業として十分に採算がとれることを実証したものとみる。
 まず、清田商店であるが、同社は茨城県笠間市の山間部に工場を持っている。敷地面積1万8000平方メートル、工場建坪660平方メートルを有し、現在、月間270トンの廃塩ビの回収、粉砕、微粉化を行なっている。工場建坪に比較し敷地面積が約30倍ということがポイントで、回収する廃塩ビを確保でき、処理をスムーズに行なえるということである。
 回収先としては、塩化ビニル樹脂を加工している軟質、硬質メーカーであり、塩ビ以外は工場内に入れないと徹底している。回収に当たり、廃塩ビを有料で引き取る通常の商行為をしている。ボランティアでリサイクル事業を行なっているわけではなくビジネスとして位置付け、事業化していることに興味がわく。
 同社は回収した廃塩ビをまず粉砕、さらに再加工を容易にするため微粉化を行ない、袋詰めを行ない出荷している。この袋も回収品である。大豆、砂糖、塩ビ、その他合成樹脂の25袋で、微粉化した再生原料に異物が混入しないように空気洗浄を行ない、十分に品質管理を行なっている。
 回収に当たり同社の岡島取締役は、「まず塩ビ以外は取り扱わないということを徹底化している。有料で回収しているわけだが、やはりバージンレジンの価格が気になる。事業を安定させるには、レジン価格が安定化してくれないことには計画が狂ってしまう」と述べ、あくまでも事業としてリサイクルに取り組んでいるとのこと。
 

● 高水準の製品化に自信(東華)

 
 次いで訪れたのは、微粉化された再生原料を使用し製品化している東華である。同社は、茨城県美野里町の国道355号線沿いに本社工場を所有し、塩ビリサイクル品の製造を行なっている。一般的にリサイクル工場は、環境面から山間部、人里離れた場所というイメージが強いが、同社は町中に立地し製造を行なっている。
 前述の清田商店を初めとして数社から再生原料を購入、月間800トン程度のリサイクルを行ない、タイル、防音シートなどを受託生産している。再生原料だけでは原料的に不足するため、若干のバージンレジンも購入し、製品化しているわけだ。
 購入した再生原料を溶融、混練し、可塑剤などの添加物を混合し、成型機でシート、タイルにしているわけだが、ポイントとしては混練を念入りに行なうことのようだ。再生原料にはすでに可塑剤の添加剤が混入しており、廃塩ビを供給するメーカーによって、その配合は異なっている。これを均一な原料にするためには、溶融温度、混練の回数、添加剤の数量などのコントロールが重要となってくる。 同社の安田社長は、「長年、塩ビ再生品を扱ってきており、バージンレジンからの製品に負けない製品を製造できる。限られた資源の有効利用ができ、品質的にも高水準の製品ができることから、リサイクル品として差別されるべきではない」と自信のほどを語る。その表れとして同社は、年々売上高を伸ばしており、リサイクル事業が定着していると言えよう。
 

● 工場見学で解ったこと

 
 2社の工場を見学、説明を聞いた結果、リサイクルは事業として確立していけること、また、細心の注意を払い樹脂の選別を行なうこと、再資源化し有効活用するという熱意を持つこと −などが重要であると解った。
 リサイクルは、まず、無理なく可能なものから、また継続していくことが重要であり、事業として取り組むことが第一歩であるであると思われる。そのためには、廃棄物を見極め、選別し、それに適した処理を行なうことが大事な点であり、もちろんゴミを出さないことにも努力していくことが重要である。