1996年3月 No.16
 
 

 (社)茨城県農業用プラスチック処理協会の使用済み農ビリサイクル事業
   年間処理能力1万トンの大型施設が完成、再生品の用途開発も今後の課題に

 

    全国の施設園芸農家にとって使用済み農ビ処理問題の解決は焦眉の急。今回は、茨城県園芸リサイクルセンター(茨城県東茨城郡茨城町網掛1154−1、TEL.029−293−6800)を訪れ、注目を集める茨城県の農ビリサイクル事業を取材してみました。  

農ビ需要の1割占める施設園芸王国

  茨城県は、メロン、ピーマン、キュウリ、トマトなどを中心とした日本有数の施設園芸王国です。農の需要も推定で約8000トンと、茨城1県だけで全国の1割近くを占め、長年の間、使用済み農ビの処理が深刻な行政課題となってきました。 昭和61年には県、農業団体、市町村が参画して(社)農業用プラスチック処理協会を設立し使用済み農ビの処理に当たってきましたが、その後の排出量の増加に対応できる施設として、平成5年に園芸リ
 サイクルセンターの建設を決定。
  協会設立後10年目に当たる昨年2月、処理能力1日8時間当たり56トン、年間1万トン(5千トン×2ライン)という大型施設が完成しました。
  こうした茨城県の取り組みに対して今、使用済み農ビ処理に悩む自治体から熱い注目が集まっており、協会の蛯原富男専務理事によれば、本格稼働となった平成7年6月以降、全国から訪れる参観者の数は半年間で67団体1200人に達したと言います。

 

■ 回収量7千トン、登録制で順調な回収

  現在、茨城県下には約8000戸の施設園芸農家がありますが、同センターに運び込まれる使用済み農ビは、このうち協会に加入する60市町村の農家約4000戸から排出される分。最終的には85全市町村の加入が目標ですが、協会設立時(31団体)に比べれば加入団体の数は倍増しており、これに伴って、回収量も当初の2500トンから平成6年度には約7000トン(泥付きの状態)にまで増加してきました。
  特に平成元年に4000トンを超えてからは、毎年500トンペースで増加を続けているとのことで、同12年には1万トンに達しセンターもフル稼働に入ることが予想されています。
  こうした膨大な量の使用済み農ビをスムースに処理するために、茨城県では登録制を実施して回収システムの強化を図っており、協会との間に産業廃棄物処理委託契約を結んだ農家に登録証を交付して(1年更改)排出者の立場を明確にする一方、排出が一時に集中しないよう、各市町村の協議会が策定した回収計画に沿って綿密な回収作業が進められています。

■ すべての関係者が運営をバックアップ

 
  また、排出者負担の原則を明確にしている点も特徴で農家は登録証の交付に際して1000円の登録料を支払うほか、平成6年からは排出量1トンにつき500円の処理料を負担する制度も導入されました。
  蛯原専務によれば、「使用済み農ビも産業廃棄物である以上、処理料は全額農家に持ってもらうのが理想だが農家だけの力で産廃処理を行うのは現実には不可能。現在は県、市町村、農業団体が3分の1ずつ、さらに農ビの販売店からも賛助金を仰いで不足分を補っている」とのことで、北海道に次ぐ農業県として「すべての関係者がバックアップする態勢」が事業の大きな支えとなっていることがうかがえました。

   

■ 再生品は床材の原料として利用

 
  センターにおける使用済み農ビの処理工程は下図に示したとおりですが、顆粒状のグラッシュに再生された塩ビは大手加工メーカーにより一括して引き取られ床材の原料として利用されています。
  「再生品の販売ルート、受け皿があることがリサイクルの最大のキーポイント。現在の加工メーカーには協会発足当初からうちの製品を受け入れてもらっている。ある程度買ってもらえる体制を始めに整えたことがここまで続いてきた最大の要因と言える」(蛯原専務)。
  一方、センターのフル稼働(1万トン処理)を目前に控えて、床材以外の再生品の用途開発も緊急の課題となっています。

 

■ 期待される農ビ関係メーカーの協力

 
  協会では昨年から内部に新規用途開発検討委員会を設けて独自に取り組みを続けていますが、農ビ関係メーカーにも用途開発の研究とその早期の実用化という点で大きな期待をかけており、
  「10年間床材の原料として使われてきたことで品質は証明済み。他のメーカーにもぜひ積極的にうちの製品を使ってもらいたい。また、現在はコストの問題もあってグラッシュだけに限定しているが、ペレットにしたほうがいいのかといった問題も含めて、メーカーと連携していい案を出し合いたい。そうしないとせっかくのリサイクルが途中でつぶれてしまう」と、強くメーカーの参入を訴えています。
  このほか、農ビを結束する塩ビ素材の荷造りヒモの開発など具体的な要望も出されています。今後の使用済み農ビリサイクル事業にとってメーカー側の協力は不可欠の要素と言えそうです。