1994年9月 No.10
 

■ 長野市のスーパーにパックマン登場、購買効果高める卵パックリサイクル

 
 卵パックリサイクルワーキンググループが開発した小型減容機パックマンが、この夏から長野市内のスーパーに登場し回収作業の切り札として順調に稼働して
 います。
  ワーキンググループでは、長野市のサニースーパーチェーン(加盟店13店、本部=長野市市場)と連携して使用済みパックの回収実験を進めていますが、今回パックマンの設置にご協力いただいたスーパーマルイチ(同市西三才)の丸山正雄社長によれば、「パックマンのおかげで回収品の嵩が減って回収作業がとても楽になった」とのこと。また、「他の店で卵を買った人でも使用済みパックはうちに持ってくる。その際大抵の人は何か買い物していくので、結果として来客増につながる」と、リサイクルの取り組みが購買効果を高めるという、意外なメリットを生み出していることを強調しています。
  サニースーパーチェーンの回収実験はこの10月でまる2年を迎えますが、同チェーンの町田泰則部長は、「現在13店全店で回収を実施しており、ごみ問題の高まりの中で回収量も着実に増えてきた。店にとっては購買効果の向上という大きな利点もあり、実験は加盟店以外の店からも注目されている。将来は他の店舗にもパックマンを設置したい」と意欲を見せていました。
 

■ 塩ビも油化できる画期的新触媒 −プラ処理協とマツダが有効性を確認

 
  廃プラスチックの熱分解油化技術について共同研究を進めてきた自動車のマツダとプラスチック処理促進協会は、このほど塩ビを含む多種類のプラスチックを無差別に油化できる画期的な新型触媒の有効性を確認、廃プラの熱エネルギー利用に新たな可能性をもたらす成果として関係者の注目を集めています。
  熱分解油化方式は、廃プラスチックのサーマルリサイクル(熱回収)を図る手法のひとつ。直接焼却して熱回収するのではなく、熱分解後に冷却液化して石油のような液体燃料としてリサイクルする方法で、近年、全国各地でその実用化へ向けた研究開発が進められています。
  廃プラスチックを熱分解すると、ガス成分や液状成分、固形成分など多様な生成物が得られますが、これらの生成物から灯油や軽油のような、常温でも液状のままで一般の生活にも利用できる石油燃料をできるだけ多く取り出すためには、生成物中の重質油成分(常温では固体または高粘性物質となる炭素数の多い炭化水素物)を軽質化するという作業が必要となります。現在行われている軽質化の方法は、生成物を触媒に接触させて分解させるやり方で、触媒にはゼオライトと呼ばれるセラミック系の素材が最も多く用いられています。しかし、この触媒には、1.塩ビ等の含塩素樹脂およびABS、ポリウレタン等の含窒素樹脂は、熱分解すると塩化水素、アンモニアガスが発生して触媒の活性を低下させるため油化できない、2.従って、都市ごみや廃車ダスト等からのプラスチックを油化するにはこれらの樹脂を分別・分離する必要がある、3.触媒のコストが高い、などネックとなる問題もいくつか指摘されてきました。
  プラ処理協とマツダの共同研究は、こうした難点をクリアできる新しいタイプの触媒としてマツダが開発した粉末状アルミナ系素材の有効性を実証しようとしたもので、昨年来、パイロットスケールにより試験を重ねてきた結果、「塩ビやABS等も安全に油化できる上、低コストでしかも寿命の長い触媒」として十分に使用できる見通しが確認されました。以下に研究成果のポイントを整理してみます(試料には都市ごみや廃車ダストに含まれる主なプラスチックを使用)。
 
 ・まず脱塩酸前処理を行って、塩化水素を別ラインで処理する。
 ・前処理の済んだ試料を約550℃で熱分解し、生成物を500℃で触媒分解す る方法が最適であり、このケースでは、廃車ダストのプラスチックから約60 %の高収率で燃料油を回収できる見込みが得られた。
 ・この燃料油中のガソリン、灯油、軽油等の軽質留分は96%だった。このこと から現行のゼオライト触媒とほぼ同等の機能があることが分かった。
 ・触媒単位当たり100倍以上の熱分解生成ガスと接触分解させても、触媒活性 が低下しないことが分かった(触媒寿命については現在も継続試験中)。
 ・熱分解の過程で生成するシアン化水素等の有害ガスは、燃焼させることにより 無害化できることが分かった。
 
  同協会では今後「研究で得られた基礎データを既設のシステムに組み込み、多種類の廃プラスチック油化が可能なプロセスを完成させていく」計画で、これが実現すれば廃プラの熱エネルギー利用に大きな力を発揮することが期待されます。